スナフキンに悪い印象のある人はいるのだろうか。放浪の吟遊詩人。ムーミンが一番尊敬する思想家。寂しげな瞳とムーミン谷にあって限りなく人に近いルックス。全く悪くない。男性のある種の憧れとも言える。
でも僕は子供の頃、スナフキンが苦手だった。
僕の子供の頃のスナフキンのイメージ。
・いつも一人でテントを張って寝る
・いつも釣りをしてるか焚き火をしてる
・ギターを持つと寂しげな歌を歌う
・「また南の国に行っちゃうの?」とムーミンが止めても聞かない
・パルナスのキャラクターとかぶっている
ざっとこんな感じ。
彼の歌は「おさびし山の歌」として有名だけど、子供の頃にはそのリリックでセンシティブな感覚は「寂しい」というイメージでしかなかった。ハードボイルドな一匹狼のスタイルは「孤独」というイメージでしかなかった。
要するに彼には安心材料である「家庭」や「調和」や「仲間」の要素が全くなく、神出鬼没な性格は「いざとなった時に頼りにならない」という不安要素でしかなかった。なのにどこか惹かれるその魅力の謎に答えがなかった。
ところが、いつしか彼の生き方が徐々に納得できるようになり、肯定的に彼を見るようになっていた。
著者のトゥーウ゛ェ・ヤンソンは「スナフキンのモデルは誰ですか?」と聞かれ「スナフキンのように自由で、何も怖がらずに、やりたいと思ったとおりにできたらどんなにいいかしら」と答えたそうだ。モデルは無いのだろう。
人は大人になるにつれ、色々なものを身につけ始める。そしてある時期がくるとそれが疎ましく、余分に思うようになる。それを自由に取捨選択できるスナフキン、子供の頃には必要のなかった勇気を持つ男、スナフキン。自分の中にスナフキンへの憧れを感じたら、それは大人になったということなんだろう。
おさびし山の歌
雨にぬれ立つ おさびし山よ
我に語れ 君の涙のそのわけを
雪降り積む おさびし山よ
我に語れ 君の強さのそのわけを
夕日に浮かぶ おさびし山よ
我に語れ 君の笑顔のそのわけを
関係ないが、「とかなんとか言ってみちゃったりして」のナレーションでお馴染みの広川太一郎が、「な、ななな、なぁ~んたる事態でしょうか、はてさて弱りました困りました」のスノークの声を担当していたと知って、いまだに芸風が変わっていないと痛感した。
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