土曜日の恋人「オレたちひょうきん族」

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「8時だよ全員集合!」が最高。
志村けんをはじめとるするザ・ドリフターズが
純な(?)ドタバタギャグをお茶の間に披露し、
僕もそれに夢中だった。
そんな当時の僕にとって
オレたちひょうきん族」のインパクトは本当に強烈だった。
小学生だった僕にとって
「オレたちひょうきん族」は「大人の世界」に満ちており、
そこで繰り広げられるネタは理解不能なものも多かった。
その中でも僕が気になっていたのが島田紳助で、
彼の発する楽屋オチだった。
彼が発言してスタッフの笑い声が「ワハハー」と入る。
今思えば笑い声を被せる編集、演出だったんだと思うけど、
それにしても笑い声が挿入されるということは
「これはギャグで、ここは笑うポイントなんですよ」
というサインなのであって、
「今の発言はギャグなんだ」
「これはスタッフを笑わせるギャグなんだ」
ということは子供ながらに理解できた。
ただ、ギャグの意味がわからなかった。
そのじれったさがたまらなかった。
よくお笑いで楽屋オチは外道だと言われるが、
今もって島田紳助が第一線で活躍していることからも、
彼のそれは1級品だったんだと思う。
僕にとって楽屋オチは「解けない大人の謎」であって、
「向こうの世界」を垣間見る接点のようなものだった。
子供の頃に触れる謎というのは
不可解であればあるほど、
魅力的で神秘的に感じるものなのだ。
学校では「8時だよ全員集合!派」と
「オレたちひょうきん族派」に分かれた。
「おいっすー!」と挨拶する奴よりも、
「ナハッナハッナハッ」
「これはこれは、吉田君のお父さん」
なんてやってる奴の方が
なんとなく洗練されていて
時代を先取りしている感じがあった。
「お笑いって、けっこう格好いいかも」と思い始めたのが
「オレたちひょうきん族」だったんじゃないかと思う。
「お笑い=バカ」という単純な図式が崩れた時代だった。
セットを組んで編集して放送される完成度の高いコント。
馴染みやすいキャラクターを量産する勢いもあった。
こん棒で叩く時の“バシッバシッ”という効果音は今でも大好きだ。
下ネタや楽屋オチを世間的に広め、
様々なキャラクターや流行語を世に送り出した
この「オレたちひょうきん族」の最大の功績は、
「お笑いやってる奴って、けっこう頭いいのかも」
と僕らの世代に思わせたことじゃないかと思う。
その布石を受けた世代が
松本人志の難解なネタを理解することに
喜び、優越感を覚えるのかも、と思ったりする。
そんなもろもろのお笑い事情はさておいて、
僕が「オレたちひょうきん族」はすごいな、と思うのは、
きちんと真面目なエンディング曲を流したことだ。
イメージ作りの面でこの功績は大きい。
「土曜日の夜は始まったばかり・・・」と歌う山下達郎。
まだ週休2日制が定着していなかったあの頃、
週末と言えば土曜日だったのだ。
お笑いとは無縁に思える
「土曜日」「週末」をテーマにした曲が
エンディングで流れることで番組が締まり、
お笑いと「週末の淡い期待感」がどこかでシンクロする。
視聴者は一通り笑った後、すがすがしく週末を迎える。
不可解な島田伸介の楽屋オチの謎解きに頭を悩ませながら、
小学生の僕は日曜日を楽しみにして眠りにつくのだった。
土曜日の夜は始まったばかり・・・

コメント

  1. gttkyk より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    なんかの拍子で立ち寄った者です。
    素敵な文章をありがとう。
    今日は月曜日、土曜日まで5日かぁ・・・。

  2. 赤NOTE より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > なんかの拍子で立ち寄った者さん
    コメントありがとう。
    週休2日制になって「土曜日の夜のワクワク感」が
    すっかり薄れてしまいましたね。
    今の金曜日の夜の感じとは、またちょっと違うんだよね…。